初等部 園長・校長コラム「風」

風Ⅱ-120 ´染井吉野´について

アスレチック付近の´染井吉野´マイツリー研究ノートより幼稚園玄関前の´染井吉野´園庭のさとざくら低学年校舎~高学年校舎のさとざくら5年生と1年生の学校めぐり

 桐朋学園にある´染井吉野´。今年は例年に比べ、遅くまで咲いていました。入学式、入園式は、´染井吉野´が咲いているなかで行うことができました。
 4年生が『マイツリー研究』をしています。学園にある木の中から自分の好きな木を選び、1年間かけて観察、研究をしていきます。私もその研究に参加し、´染井吉野´を調べてみたいと思いました。岩波新書の『桜』(勝木俊雄著)を読んでみました。
◆名前の由来
 江戸染井村から売り出された吉野桜(奈良県の桜の名所である吉野にちなんだ名称)で´染井吉野´ということでした。明治10年代、東京帝室博物館(東京国立博物館)天産部職員の藤野寄命(きめい)氏が上野公園の桜を調査し、1900年日本園芸雑誌に´染井吉野´と命名したそうです。見栄えの良さや成長の早さなどから全国にひろがったそうです。
◆なぜ同時期に咲くのか
 どうして´染井吉野´は同時期に咲くのだろうと思っていました。勝木氏によれば、´染井吉野´は「接木によって増殖され、すべての個体が同じ遺伝子をもつクローン」いうことが理由としてあげられていました。「新しい個体は、接いだ部分から下側の根の部分は親木と異なるが、接いだ部分から上部は親木とは変わらない形質」をもち、「同じ形態をもつ花をつけ、同じタイミングで一斉に咲いて一斉に散る」と言います。ちなみに、種子で増殖したサクラの場合、一斉に咲くことはないそうです。
◆学園の´染井吉野´は大丈夫か? 樹齢60年説に関して
 毎年きれいな花を咲かせている´染井吉野´。幼稚園玄関前の´染井吉野´は古木となりました。台風で枝が折れてしまうなど、枯れて倒れたりしないか心配されています。「ソメイヨシノ寿命60年説」も気になります。
 勝木氏によれば、「染井吉野は実は長命の樹木であり、生き物としてみた場合、数十年といった短い寿命であるとは言い難く、短命説は明らかに誤解である」と言います。弘前公園の´染井吉野´は1882年に植栽されたという記録があり、小石川植物園でも100年以上であると言います。
 勝木氏は、´染井吉野´について「植えてから20~30年ぐらいで最も見頃な状態」となり、その後は「花つきが悪くなり、花見の対象というモノとしての寿命が尽きたとみられるようになる」というのが正しい捉えではないかと言います。そして、「よく手入れがなされれば寿命は延びる」とも。そのように考えれば、玄関前の´染井吉野´も大切に育て、これからも私たちの身近にいてほしいと思います。
◆さらに知りたいこと
 現在、満開の〈さとざくら〉についても調べてみたくなります。「さくら」を研究対象にひろげてみようかと考えます。「桜はどのようにして春を感じ開花するのか」「毎年ほぼ同じ時期に開花するのはどうしてか」など不思議です。
 勝木氏は、「桜の花の花芽は、咲く前年の夏にはできている。葉のつけ根に小さな突起がひとつ生じ、これが冬芽となる。花が伸びるものを花芽、葉がつく枝が伸びるものを葉芽という。/通常の花芽は夏期にできたあと、翌年の春まで休眠する。(略)葉で生成されたアブシジン酸という植物ホルモンが、冬芽の成長に必要なジベレリンの作用を抑制するため、冬芽は休眠する。(略)冬期の低温刺激によってアブシジン酸が減少するとともにジベレリンが増加し、冬芽の休眠が解除される。休眠が解除され、暖かくなると冬芽が成長し、やがて開花する」と言います。1年間定点観察などもして捉えてみたいと思います。