桐朋小だより

2018.9.18

3年生

蚕蛾から糸をつむぐ

理科では昆虫の成長について学習をします。3年生では、東、西組ともに、今年は蚕の育成をしました。世話を通して、幼虫からまゆ、そして成虫へと成長していくその変化を子ども達といっしょに感じることができました。

 

初めて、蚕を教室にもちこんだときは、

「きもちわるーい!」

「白くてうねうねしている!」

とみんなパニックでした。

すると、ある子が、手のひらに一匹のせて、目を近づけてじっくり眺めています。

「なんだか、かわいいよ」

嬉しそうに、なでていました。しばらくは、その子がエサやり係となりました。

 

毎朝、教室にやってくると、20ぴきほどいる蚕たちのフンの掃除からです。手際よく片付けて、桑の葉っぱでつくられたペースト状のエサをあげると、蚕たちはもりもり寄ってきます。懸命に食べている姿をみて

「週末も持って帰って、世話をしてあげたい!」

と、大事そうに段ボール箱に入った蚕を抱えて持って帰りました。

 

 

楽しそうに世話をしているその子の姿に触発されたのが、

「私もエサやってみたいな」

と、ひとり、またひとりと増えていき、いつのまにか

「いやーん。蚕つるつるしていてかわいい!」

と人気者になりました。

一ヶ月も世話していると愛着がわいてくるものです。いよいよまゆを作り始める蚕たちをみて

「先生、蚕って糸になるっていってたけどほんと?」

と、怪訝そうな顔をして聞いてきます。

「そうだよ。まゆをゆでて糸をまきとっていくんだよ。やってみる?」

そうきくと、みんな一斉に

「やだやだ!残酷!」

「そんなの、かわいそうだよ!」

と大反対。しかし、蚕蛾はもとは人間が生糸を紡ぐために「つくられた」命だということを家庭学習で調べてきた子がいました。

 

本当に、殺してしまっていいのだろうか。

 

そんな問いをつきつけられながらも、糸を集めてみたい好奇心との話し合いが続きました。結果、まゆは数個のこして、糸を紡ぐことになりましたが、私たちの生活には、大切な命の犠牲の上で成り立っていること、そんなことを考えるきっかけともなりました。理科をとおして、昆虫の成長だけではなく、命の大切さへも広がりました。

放課後、手始めに6個ほど、まゆを茹でてみました。興味のある子達はみんな鍋をかこんでいます。

「やっぱりかわいそう」

と目に涙を浮かべている子もいました。こういうときに

「でもさ、やっぱりみてみたいな」

と好奇心も旺盛な子どもたち

「ちゃんと糸をとってありがとうを言おうよ」

そんな会話をしながら、茹で始めて5分ぐらいすると、糸がほぐれてきました。

 

驚きと共に、ペットボトルにぐるぐるとまき付けること1時間。みんなもくもくと熱中する時間でした。糸は思ったよりも、張りがあって光り輝いて美しい。触ってはつるつるの感触をたしかめながら、蚕のもつ不思議さと素晴らしさにもふれることができました。

 

子ども達は、その後、下校してしまったのですが、のこったマユを仕上げてしまおうと、糸をぐるぐる巻き取ってはみたものの、1時間経っても、2時間経っても巻き終わりませんでした。1匹のマユからほんと驚くほどの糸が巻き取れるのを時間を通して、先生も感じることができました。とほほ。

 

昔の人達はこういう生糸で着物を作ってきていたこと。そんなことに思いをはせながら2学期は、繊維のヒミツへと学習を広げていこうと考えているところです。

 

 

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