2018.5.18

子育ての現実と願い [Ⅱ-155]

 先週、保護者のみなさんと学習会を行いました。内容は、子育ての現実と願い、桐朋幼稚園で大切にしていることなどでした。保護者同士が交流のゲームをしたあとに、子育てで困っていることや心配なこと、大切にしていることを出していただきました。それを付箋に書いていただいて、見合いました。

 3歳の子の保護者の方からは、〇わがままをきき過ぎたのか、気に入らないことがあると意見が通るまですねること。結果、言うことを聞いてしまうこと。 〇折り合いがつかないと、イライラして怒ってしまう。 〇わがままと機嫌が悪いときの対処の仕方にとても迷い中です。頑固で我が強くて困っています。 〇親が感情的にならないようにすること。 〇「いや」「だっこ」やごはんを食べさせてほしいが最近多くなってきているので困っています。 〇おしり、おなら、うんち。発言が多くなった。食事中は困ります。 〇自分をあとまわしにしないで、遠慮やまわりを気にせずに、自分をおさえないで前向きに行動できるように応援したい。 〇特に集団生活がはじまり、周りに迷惑をかけていないか、私自身の方が気にしすぎてしまうこと。など、たくさんの心配、困っていることが出されました。

 お互いの心配や困っていることを見合ったときには、「うちもあるある、みんな同じ悩みを持っていたんだ…。」/「みなさんも子育てについて色々と悩んでいることがわかり、自分だけではないことを知りました。悩みも自分と同じものもありました。」/「どうしても自分には自信がなく、他の保護者の方を傍から見ていると、しっかりしていて完璧だなと勝手に思ってしまうけど、みんなそれぞれ悩みがあったり、子育てについて考えたり、同じなんだなと思って安心しました。特に『母親も頑張りすぎない』と書かれた言葉に共感しました。」/「困っていること、悩んでいること、うまくいかないこと等、毎日反省したり落ち込んだりの繰り返しで、つい自分だけと思ってしまいがちでした。他のお母さん達もそれぞれに苦労があり、子どもと向き合いながら頑張っていることが改めてわかり、気持ちがラクになりました。その時はどのように乗り切っているのかを話す機会があればぜひ聞いてみたいと思います。」などの感想が出されました。

 子育ての心配や悩みはつきません。一人で抱えこまないで、同じ子どもを育てるもの同士、不安や悩みも語り、知恵を出し合い、差さえ合っていきましょう。みなさんと子どもを育てる豊かなコミュニティーをつくり、ひろげていきたいです。

 少し、おおよそ3歳や4歳の子どもについても考えてみます。龍谷大学の白石正久教授の発達論(『発達の扉』など著書多数)にたくさん学んでいます。

〇おおよそ3歳児くらい ※個人差の大きいことも捉えておきましょう。
 2~3歳頃は、「お兄ちゃんのようになりたい」など、大きい自分を求めてやまない心が高まり、そのようにならない自分との間で、悩んだり、葛藤するときがあります。そうしたときに、〈しっかりすること〉、〈がんばること〉を求められたりしたら、「いや」など反抗してしまうことがあります。
 はじめての場面で、ものかげに隠れて見たり、「はにかむ」様子もあります。そのことは、新しい出会いを積極的にしたい前向きの心のあらわれと捉えてみてはどうでしょう。また、「ほんとうは、○○したかったんだよね」など、心のなかの前向きな葛藤をことばにして伝えてみると、その子は自分を認められた気持ちをもち、よりよい自分を選びとりたい願いを育てていけるようになると思います。

〇おおよそ4歳児くらい ※個人差の大きいことも捉えておきましょう。
 最後に、「指すい」のことに触れましたが、なかみは話せませんでした。ごめんなさい。
 4歳頃に、少しむずかしい課題に挑もうとするとき、「できるかな、できないかな」の心の波動が、手にあらわれることがあります。強がってみたりしても、手の動きには内面の葛藤があらわれることが見られます。
 みずから表現したいけれども、表現の力がおいつかないこともあります。そのときに、「早くいいなさい」「何が言いたいの」などと言われてしまったら…。子どもは、「えーと」「それで」…、指すいも見られます。
 指すいは、相手の話を聞き ながら思いをめぐらすという「ながら」行動がとれるようになった証とも言われています。

 自分が尊重してもらえたおもいをもつこと。「どうして大人のいうことを聞かないの」と叱る前に、子どもの今のがんばりを尊重し、「よりよい自分」を選べるよう選択肢をつくってあげることが大切だと考えます。「自分で最後までしたい」願いを尊重しつつ、つまずいたときには、いつでも「いっしょにがんばってみようね」と支えてあげたいですね。

 さいごに、最近読んだ『ルポ 保育格差』(小林美希著、岩波新書)に書かれていたことばから。
「子どもは、今の時間に意味があるから生きている。明日のために今を生きるわけではない。どんな幼い子でも、自分のやりたいこと、やっていることに意味がある。玩具の取り合いにも理由がある。その理由や葛藤という子ど もの内面の世界を掴むこと」(佐貫浩法政大学名誉教授)を大切にしたいです。

 

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