研究所だより

巳年おとこのつぶやき〈第38・39回〉

2017年07月19日

『桐朋教育49号』が完成いたしました!
 
ご希望の方は、総合受付、または、
教育研究所窓口まで、どうぞお越しくださいませ。
 
……さて、2017年も上半期を終え、
もうすぐ夏休みを迎えますね。
 
そんな2017年度、杉本發先生が、
研究所にいらっしゃいました。
 
岸先生と杉本先生の共通点は、「巳年生まれ」。
 
ですので、『二八のつぶやき』に替わって、
今年度からは『巳年おとこのつぶやき』に
タイトル、変わっております!
 
タイトルロゴもかわいらしくリニューアル♪
 
今後とも、『巳年おとこのつぶやき』を
どうぞよろしくお願いいたします!
 
 
 
〔2017 /  4  No.38〕
 
 
 
昨年の「甑」11月号で
恩田陸の最新作「蜜蜂と遠雷」(幻冬社)を紹介した。
 
今年のナンバーワン小説はこれで決まり、
などと随分力んで紹介した記憶がある。
 
その後、「蜜蜂と遠雷」は「直木賞」を受賞。
文学界の権威たちが選ぶ「直木賞」に対して、
全国の書店員さんたちが選ぶ「本屋大賞」。
さすがに「本屋大賞」の受賞はないだろう
と思っていたら、これも受賞。
やはり面白いものは面白い。ダブル受賞にも納得。
 
さて、今回話題にしたいのは
「本屋大賞」で第二位になった作品、
森絵都の「みかづき」。
実は個人的には「みかづき」が
本屋大賞に選ばれるのではと予想していたのだが・・・
 
昭和36年。
千葉県の小学校用務員、大島吾郎は、
勉強を教えていた児童の母親、
赤坂千明に誘われ、ともに学習塾を立ち上げる。
やがてシングルマザーの千明と結婚し、家族になった吾郎。
そこから親子三代にわたるこの壮大な物語が始まる。
 
学校教育を太陽に、塾を月に見立てて、
理想の教育を求め続ける千明と吾郎、
そしてその子どもと孫たち。
 
昭和36年頃、塾に通う子どもたちは少なかった。
しかし、その後受験戦争時代に入り、
学習塾は隆盛期を迎える。
理想の教育をめざし、文部省と対立する塾関係者たち。
そして、千明と吾郎も目指す方向がすれ違い、やがて決別。
そんな親たちを見ながら時に反発し、
共感しながらやがては教育界に身を投じてゆく子どもたち。
 
振り返れば、いつの時代も教育の在り方は定まらず、
国の政策によって二転三転していくのがこの国の現状。
作中、ある主人公がつぶやく
 
「教育は子どもをコントロールするためにあるんじゃない。
不条理に抗う力、
たやすくコントロールされないための力を
授けるためにあるんだ」
 
という言葉が強く心に残った。
 
そして物語の終盤、
タイトルに込められた作者の思いが胸を打つ。
「常に何かが欠けている三日月。
教育も自分と同様、そのようなものであるのかもしれない。
欠けている自覚があればこそ、
人は満ちよう、満ちようと研鑽を積むのかもしれない」。
 
我が強く、エキセントリックな千明に対して、
終始温和な吾郎。
決別してしまった二人だが、
ラスト一行の吾郎のセリフに心が温かくなった。
是非一読をお勧めする。
 
(岸)
 
 
 
〔2017 /  5  No.39〕
 
 
朝日新聞の五月一日(月)の朝刊に、
「『地毛証明書』都立高の6割」、
「学校の評判落とせない」
との見出しの記事が掲載された。
都立高校でこのような「生活指導」に
力を入れているということに、まず驚いた。
 
中高一貫の学校を作ることによって、
私立学校の特性の一つを奪い、
進学重点校を作って私立に対抗したり、
さらに今度は生活指導の重点化でも
私立学校の特性を奪うのか・・・?
と直感的に感じて、記事を読んでみた。
 
それによると、都立高校の約6割の学校で、
髪の毛を染めたり、パーマをかけたりしていないか、
入学時に一部の生徒から『地毛証明書』を
提出させている、という。
中には幼いときの写真を一緒に
提出させている学校もあるという。
 
多くの都立高校では校則で髪の染色や
パーマを禁止しているが、
染めているのに地毛だと言い張る生徒も多いので、
その対策として元から茶色い生徒や
天然パーマの生徒の保護者に予め
「証明書」を提出させている、という。
 
この背景には、都立高校は私立に比べて
生活指導が甘いという評価が定着していて、
入試倍率の低下につながっている、ということがあるそうだ。
たしかに、桐朋でも十数年前の頃、
ルーズソックスや茶髪、ピアスなどが席巻した時期があった。
 
クラスや学年単位で話をしたり、
個々に生徒を呼び出して膝詰めで話をしたりした記憶もある。
けれどもそれらの指導はほとんど効果をみず、
流行の勢いには逆らえなかった。
そして流行の終わりとともに収束していった。
 
今でもスカート丈を短くする生徒は学年が
上がるとともに増える状況で、
その指導には無力感がある。
さらにまた「くるぶしソックス」なる
新たな流行がひたひたと広がりつつある。
 
生徒指導は、ある面で常に「いたちごっこ」である。
『服装規定』の中に書かれた「清楚な美しさ」とは何かを、
言い続け、訴え続け、
・・・ようやく伝わったかな、どうかなと
思うころには卒業式を迎える。
 
(杉本)