研究所だより

巳年おとこのつぶやき〈第40・41・42回〉

2017年12月21日

 
今年も、残りわずかとなりました。
寒い日が続いておりますね。
 
先日、桐朋女子の校舎が舞台となった、
『ハローグッバイ』の映画鑑賞会が
高2の生徒さんを対象に行われました。

(詳しくは中高HPの桐朋ニュース、
2017.12.20の回をご覧くださいませ)
 
菊地健雄監督、企画・プロデュースの内田わかさん(46期赤)、
脚本家の加藤綾子さん(46期赤)も上映後に登壇なさり、
本作品にまつわるお話や、桐朋女子についての
思い出などを語ってくださいました。
 
中でも、菊地監督が
「古い建物には記憶が残っている」
という趣旨のお話をなさったのが、
とても印象的でした。

桐朋で学生時代を過ごした
たくさんの桐朋生の記憶が、
この校舎には刻まれていて、
そして今も同じ場所で、学生の皆さんの、
新たな歴史が日々綴られていること。

その空気の中で、『ハローグッバイ』という
作品が撮影できたことを、
うれしく思っている、というような
お話をしてくださいました。

確かに、仙川キャンパスで
日々過ごしていると、
なんとなく、この場所は、
同窓生の方の様々な思い出、
うれしかったこと、悲しかったこと、
それこそ、汗も涙もあるのでしょうが、
そんなすべての記憶に、
守られているような気がします。
 
『ハローグッバイ』という映画は、
その内容自体、とても清新で心にしみる作品ですが、
そんな風に、校舎の雰囲気も、
映画に一役貢献しているのだとしたら、
うれしいな、と思います。

そんな『ハローグッバイ』に携わられた
46期赤のお二人のご紹介もしております、
『巳年おとこのつぶやき』。

今年最後の更新となってしまいましたが、
どうぞご覧になってくださいね。

それでは、よいお年を!


 
 
 
〔2017 / 6・7 No.40〕
 
一昨日(7月4日)「桐朋教育」49号の原稿を脱稿。
すべての原稿を印刷所に入稿し、あとは仕上がりを待つのみ、
ホッと一息ついているところである。
 
「桐朋教育」の中に毎回恒例の「こんにちは卒業生」のコーナーがある。
 
桐朋教育の成果を社会で体現し、
活躍している卒業生にお会いできるのは編集者の役得であるが、
今年もまた素晴らしい4人の卒業生を紹介している。
 
現在プロのピアニストとして活躍中の三舩優子さん(41期)、
世界の児童労働の撤廃を目指すNPO法人代表を務める岩附由香さん(49期)、
食のライターとして精力的に執筆活動を続けている柴田さなえさん(50期)、
そして若手企業家として現在脚光を浴びている山本峰華さん(65期)
の4名である。
 
その活躍の詳細は「桐朋教育」49号をお読みいただきたいが、
この他にも最近活躍中の卒業生にお会いする機会があった。
 
ひとりは先の都議会議員選挙で都民ファーストの会から立候補し
見事当選した齋藤(旧姓藤田)礼伊奈さん(53期)。
レゲエシンガー「lecca」としてメジャーデビューし活躍していたが、
早稲田大学政治経済学部卒業ということで
かねてより政治に関心があり今回の立候補に至ったとのこと。
 
今後は音楽活動は休止し、政治活動に専念するという。
東京大改革に向けてその力を大いに発揮してくれることを期待したい。
 
さらに7月15日公開の映画「ハローグッバイ」の
企画・プロデューサーを担当した内田わかさん、
そしてその脚本を担当した加藤綾子さん(共に46期)。
同期のふたりがタッグを組んで映画制作なんてとても素晴らしいことである。
 
私はまだこの映画を観ていないが、女子高生ふたりが織りなす青春ドラマとのこと。
劇中の校舎の映像は桐朋で撮影したというが、
予告編で観るかぎりたいへん効果的にきれいに使われている。
 
ただ残念なのは女子高生の友情がテーマの映画なのに、
単館ロードショー、しかもレイトショー公開で夜9時過ぎの開演とか。
配給会社は何を考えているんでしょうね。
 
ともかくこの映画が評判を呼び、多くの人の目に届くことを期待したい。
 
素晴らしい卒業生に出会うことのできたこの一ヶ月でした。
 
(岸)
 
 
 
 
〔2017 /  9  No.41〕
 
この『轂』の二面の定期購読誌の書評のため、
『月刊高校教育』8月号の特集「深刻化する貧困・格差問題」を読んだ。
 
この春に読んだ『下流老人』(藤田孝典著・朝日新書)、
『給食費未納』(鳫咲子著・光文社新書)とともに、
日本人の格差、老人の貧困、子どもの貧困などの問題がいかに深刻であるか、痛感させられた。
 
『月刊高校教育』からいくつか気になった文を拾うと、
 
「まず、服装で気づく。周囲が毎日洋服を取り換える中で、
同じ服を着続け、しかも汚れて黒ずんでいる子どもがいる。」、
 
「給食の食べ方でも貧困の状況はわかる。
貧困家庭の子どもは一日の中で唯一まともな食事が給食という場合が多いため、真剣に食べる。
給食がない長期休み明けに、目に見えてやせてくる子、太ってくる子には要注意である。」(小・中学生の場合)
 
「生徒たちの中には、毎月アルバイトで十万円近く稼ぎ、
自分の学費、携帯利用料、小遣いを賄い、
その上数万円家計に援助しているという強者もいる。
 
・・・このような高校生は・・・
安価な労働力で企業収益を上げようとする日本経済の暗部に
いやおうなく組み込まれている・・・」、
「ある中堅高校での事例である。真面目な男子生徒が
二年生の二学期に突然二週間学校を休んだ。
 
・・・それまで理系進学希望だったのに就職希望に変わり、態度もかわったという。
・・・父が仕事のストレスで精神疾患を発病し、病休に入った。
 
父の収入減を埋めるため、母も慣れないパート勤めを始め、
家族関係は一気にぎすぎすしたものになった。
休み続けた二週間は、自分の気持ちを納得させるための期間だったのだ。」(高校生の場合)
 
桐朋学園という学校、職場にいると、
このような貧困家庭の現状に直面することはほとんどないが、
想像を超えた形で格差社会は進行している。
 
『下流老人』では、何百万円かの貯金を貯めて定年を迎えたのに、
数年後に重い病気にかかり、治療費・入院費・薬代で
二、三年で貯金が底をついたという実例もあり、
 
貧困は遠い国の話というのでは決してなく、
むしろ私たちのすぐそばに忍び寄っていて、
いつ、何をきっかけに陥るかわからないものだと感じた次第である。
 
(杉本)
 
 
 
 
 
〔2017 /  11  No.42〕
 
 
菅田将暉(すだ まさき)という役者が好きだ。
1993年生まれの24歳。
映画、舞台、テレビ、バラエティー、CM(auの鬼ちゃん)、
歌手と幅広く活躍。そのどの場面においても飾らず、
自然体で本当に楽しそうに仕事をしている姿がいい。
 
その菅田将暉が主演する映画「あゝ、荒野」を観た。
前・後編あわせて5時間を超える大作だが、
一瞬たりとも飽きることなく、映画の世界に引き込まれてしまった。
 
舞台は2021年の東京・新宿。
冒頭から新宿での爆破テロが起こり不穏な空気が漂う。
少年院から出てきたばかりの新次(菅田)と、
吃音ゆえに引っ込み思案で他者との関係を上手く築けない
健二(ヤン・イクチュン)が出会い、共にプロボクサーへの道を歩んでいく。
 
主人公の二人とそれぞれの親、恋人、かつて自分を裏切った男等々、
様々な人間が絡み合い繰り広げる愛憎劇。
登場人物は皆自分の本能や欲求をむき出しにし、互いにぶつかり合う。
見ていて息苦しくなるような場面も多い。
 
前編では共にプロボクサーを目指す二人が兄弟のような絆を紡いでゆくが、
後編では運命に導かれるようにリング上で互いの拳をぶつけ合うことになる。
 
昔のボクシング漫画「あしたのジョー」を思い出すような展開だが、
原作は寺山修司が唯一残した長編小説。
原作は1966年の物語だが、本作は2021年。
共に東京オリンピックの後の日本。
 
痛快なボクシング映画という側面だけでなく、
このまま進むと日本にも徴兵制が布かれるというような時代の空気を感じさせる場面、
新次がアルバイトで働く介護施設での孤独な老人との出会い、
東日本大震災の傷を背負って生きる恋人との関わりなど、
数年後の日本が纏っている不穏な空気感を描くためにも
2021年という舞台設定が必要だったのではないだろうか。
 
この作品のために徹底的に肉体を鍛え上げたという菅田。
その鋼のような肉体と狂気が宿る表情。
これからも菅田将暉という役者から目が離せない。
(岸)
 

巳年おとこのつぶやき〈第40・41・42回〉

2017年12月21日

 
今年も、残りわずかとなりました。
寒い日が続いておりますね。
 
先日、桐朋女子の校舎が舞台となった、
『ハローグッバイ』の映画鑑賞会が
高2の生徒さんを対象に行われました。

(詳しくは中高HPの桐朋ニュース、
2017.12.20の回をご覧くださいませ)
 
菊地健雄監督、企画・プロデュースの内田わかさん(46期赤)、
脚本家の加藤綾子さん(46期赤)も上映後に登壇なさり、
本作品にまつわるお話や、桐朋女子についての
思い出などを語ってくださいました。
 
中でも、菊地監督が
「古い建物には記憶が残っている」
という趣旨のお話をなさったのが、
とても印象的でした。

桐朋で学生時代を過ごした
たくさんの桐朋生の記憶が、
この校舎には刻まれていて、
そして今も同じ場所で、学生の皆さんの、
新たな歴史が日々綴られていること。

その空気の中で、『ハローグッバイ』という
作品が撮影できたことを、
うれしく思っている、というような
お話をしてくださいました。

確かに、この仙川キャンパスで
日々過ごしていても、
なんとなく、この場所は、
同窓生の方の様々な思い出、
うれしかったこと、悲しかったこと、
それこそ、汗も涙もあるのでしょうが、
そんなすべての記憶に、
守られているような気がします。
 
『ハローグッバイ』という映画は、
その内容自体、とても清新で心にしみる作品ですが、
そんな風に、校舎の雰囲気も、
映画に一役貢献しているのだとしたら、
うれしいな、と思います。

そんな『ハローグッバイ』に携わられた
46期赤のお二人のご紹介もしております、
『巳年おとこのつぶやき』。

今年最後の更新となってしまいましたが、
どうぞご覧になってくださいね。

それでは、よいお年を!


 
 
 
〔2017 / 6・7 No.40〕
 
一昨日(7月4日)「桐朋教育」49号の原稿を脱稿。
すべての原稿を印刷所に入稿し、あとは仕上がりを待つのみ、
ホッと一息ついているところである。
 
「桐朋教育」の中に毎回恒例の「こんにちは卒業生」のコーナーがある。
 
桐朋教育の成果を社会で体現し、
活躍している卒業生にお会いできるのは編集者の役得であるが、
今年もまた素晴らしい4人の卒業生を紹介している。
 
現在プロのピアニストとして活躍中の三舩優子さん(41期)、
世界の児童労働の撤廃を目指すNPO法人代表を務める岩附由香さん(49期)、
食のライターとして精力的に執筆活動を続けている柴田さなえさん(50期)、
そして若手企業家として現在脚光を浴びている山本峰華さん(65期)
の4名である。
 
その活躍の詳細は「桐朋教育」49号をお読みいただきたいが、
この他にも最近活躍中の卒業生にお会いする機会があった。
 
ひとりは先の都議会議員選挙で都民ファーストの会から立候補し
見事当選した齋藤(旧姓藤田)礼伊奈さん(53期)。
レゲエシンガー「lecca」としてメジャーデビューし活躍していたが、
早稲田大学政治経済学部卒業ということで
かねてより政治に関心があり今回の立候補に至ったとのこと。
 
今後は音楽活動は休止し、政治活動に専念するという。
東京大改革に向けてその力を大いに発揮してくれることを期待したい。
 
さらに7月15日公開の映画「ハローグッバイ」の
企画・プロデューサーを担当した内田わかさん、
そしてその脚本を担当した加藤綾子さん(共に46期)。
同期のふたりがタッグを組んで映画制作なんてとても素晴らしいことである。
 
私はまだこの映画を観ていないが、女子高生ふたりが織りなす青春ドラマとのこと。
劇中の校舎の映像は桐朋で撮影したというが、
予告編で観るかぎりたいへん効果的にきれいに使われている。
 
ただ残念なのは女子高生の友情がテーマの映画なのに、
単館ロードショー、しかもレイトショー公開で夜9時過ぎの開演とか。
配給会社は何を考えているんでしょうね。
 
ともかくこの映画が評判を呼び、多くの人の目に届くことを期待したい。
 
素晴らしい卒業生に出会うことのできたこの一ヶ月でした。
 
(岸)
 
 
 
 
〔2017 /  9  No.41〕
 
この『轂』の二面の定期購読誌の書評のため、
『月刊高校教育』8月号の特集「深刻化する貧困・格差問題」を読んだ。
 
この春に読んだ『下流老人』(藤田孝典著・朝日新書)、
『給食費未納』(鳫咲子著・光文社新書)とともに、
日本人の格差、老人の貧困、子どもの貧困などの問題がいかに深刻であるか、痛感させられた。
 
『月刊高校教育』からいくつか気になった文を拾うと、
 
「まず、服装で気づく。周囲が毎日洋服を取り換える中で、
同じ服を着続け、しかも汚れて黒ずんでいる子どもがいる。」、
 
「給食の食べ方でも貧困の状況はわかる。
貧困家庭の子どもは一日の中で唯一まともな食事が給食という場合が多いため、真剣に食べる。
給食がない長期休み明けに、目に見えてやせてくる子、太ってくる子には要注意である。」(小・中学生の場合)
 
「生徒たちの中には、毎月アルバイトで十万円近く稼ぎ、
自分の学費、携帯利用料、小遣いを賄い、
その上数万円家計に援助しているという強者もいる。
 
・・・このような高校生は・・・
安価な労働力で企業収益を上げようとする日本経済の暗部に
いやおうなく組み込まれている・・・」、
「ある中堅高校での事例である。真面目な男子生徒が
二年生の二学期に突然二週間学校を休んだ。
 
・・・それまで理系進学希望だったのに就職希望に変わり、態度もかわったという。
・・・父が仕事のストレスで精神疾患を発病し、病休に入った。
 
父の収入減を埋めるため、母も慣れないパート勤めを始め、
家族関係は一気にぎすぎすしたものになった。
休み続けた二週間は、自分の気持ちを納得させるための期間だったのだ。」(高校生の場合)
 
桐朋学園という学校、職場にいると、
このような貧困家庭の現状に直面することはほとんどないが、
想像を超えた形で格差社会は進行している。
 
『下流老人』では、何百万円かの貯金を貯めて定年を迎えたのに、
数年後に重い病気にかかり、治療費・入院費・薬代で
二、三年で貯金が底をついたという実例もあり、
 
貧困は遠い国の話というのでは決してなく、
むしろ私たちのすぐそばに忍び寄っていて、
いつ、何をきっかけに陥るかわからないものだと感じた次第である。
 
(杉本)
 
 
 
 
 
〔2017 /  11  No.42〕
 
 
菅田将暉(すだ まさき)という役者が好きだ。
1993年生まれの24歳。
映画、舞台、テレビ、バラエティー、CM(auの鬼ちゃん)、
歌手と幅広く活躍。そのどの場面においても飾らず、
自然体で本当に楽しそうに仕事をしている姿がいい。
 
その菅田将暉が主演する映画「あゝ、荒野」を観た。
前・後編あわせて5時間を超える大作だが、
一瞬たりとも飽きることなく、映画の世界に引き込まれてしまった。
 
舞台は2021年の東京・新宿。
冒頭から新宿での爆破テロが起こり不穏な空気が漂う。
少年院から出てきたばかりの新次(菅田)と、
吃音ゆえに引っ込み思案で他者との関係を上手く築けない
健二(ヤン・イクチュン)が出会い、共にプロボクサーへの道を歩んでいく。
 
主人公の二人とそれぞれの親、恋人、かつて自分を裏切った男等々、
様々な人間が絡み合い繰り広げる愛憎劇。
登場人物は皆自分の本能や欲求をむき出しにし、互いにぶつかり合う。
見ていて息苦しくなるような場面も多い。
 
前編では共にプロボクサーを目指す二人が兄弟のような絆を紡いでゆくが、
後編では運命に導かれるようにリング上で互いの拳をぶつけ合うことになる。
 
昔のボクシング漫画「あしたのジョー」を思い出すような展開だが、
原作は寺山修司が唯一残した長編小説。
原作は1966年の物語だが、本作は2021年。
共に東京オリンピックの後の日本。
 
痛快なボクシング映画という側面だけでなく、
このまま進むと日本にも徴兵制が布かれるというような時代の空気を感じさせる場面、
新次がアルバイトで働く介護施設での孤独な老人との出会い、
東日本大震災の傷を背負って生きる恋人との関わりなど、
数年後の日本が纏っている不穏な空気感を描くためにも
2021年という舞台設定が必要だったのではないだろうか。
 
この作品のために徹底的に肉体を鍛え上げたという菅田。
その鋼のような肉体と狂気が宿る表情。
これからも菅田将暉という役者から目が離せない。
(岸)
 

巳年おとこのつぶやき〈第38・39回〉

2017年07月19日

『桐朋教育49号』が完成いたしました!
 
ご希望の方は、総合受付、または、
教育研究所窓口まで、どうぞお越しくださいませ。
 
……さて、2017年も上半期を終え、
もうすぐ夏休みを迎えますね。
 
そんな2017年度、杉本發先生が、
研究所にいらっしゃいました。
 
岸先生と杉本先生の共通点は、「巳年生まれ」。
 
ですので、『二八のつぶやき』に替わって、
今年度からは『巳年おとこのつぶやき』に
タイトル、変わっております!
 
タイトルロゴもかわいらしくリニューアル♪
 
今後とも、『巳年おとこのつぶやき』を
どうぞよろしくお願いいたします!
 
 
 
〔2017 /  4  No.38〕
 
 
 
昨年の「甑」11月号で
恩田陸の最新作「蜜蜂と遠雷」(幻冬社)を紹介した。
 
今年のナンバーワン小説はこれで決まり、
などと随分力んで紹介した記憶がある。
 
その後、「蜜蜂と遠雷」は「直木賞」を受賞。
文学界の権威たちが選ぶ「直木賞」に対して、
全国の書店員さんたちが選ぶ「本屋大賞」。
さすがに「本屋大賞」の受賞はないだろう
と思っていたら、これも受賞。
やはり面白いものは面白い。ダブル受賞にも納得。
 
さて、今回話題にしたいのは
「本屋大賞」で第二位になった作品、
森絵都の「みかづき」。
実は個人的には「みかづき」が
本屋大賞に選ばれるのではと予想していたのだが・・・
 
昭和36年。
千葉県の小学校用務員、大島吾郎は、
勉強を教えていた児童の母親、
赤坂千明に誘われ、ともに学習塾を立ち上げる。
やがてシングルマザーの千明と結婚し、家族になった吾郎。
そこから親子三代にわたるこの壮大な物語が始まる。
 
学校教育を太陽に、塾を月に見立てて、
理想の教育を求め続ける千明と吾郎、
そしてその子どもと孫たち。
 
昭和36年頃、塾に通う子どもたちは少なかった。
しかし、その後受験戦争時代に入り、
学習塾は隆盛期を迎える。
理想の教育をめざし、文部省と対立する塾関係者たち。
そして、千明と吾郎も目指す方向がすれ違い、やがて決別。
そんな親たちを見ながら時に反発し、
共感しながらやがては教育界に身を投じてゆく子どもたち。
 
振り返れば、いつの時代も教育の在り方は定まらず、
国の政策によって二転三転していくのがこの国の現状。
作中、ある主人公がつぶやく
 
「教育は子どもをコントロールするためにあるんじゃない。
不条理に抗う力、
たやすくコントロールされないための力を
授けるためにあるんだ」
 
という言葉が強く心に残った。
 
そして物語の終盤、
タイトルに込められた作者の思いが胸を打つ。
「常に何かが欠けている三日月。
教育も自分と同様、そのようなものであるのかもしれない。
欠けている自覚があればこそ、
人は満ちよう、満ちようと研鑽を積むのかもしれない」。
 
我が強く、エキセントリックな千明に対して、
終始温和な吾郎。
決別してしまった二人だが、
ラスト一行の吾郎のセリフに心が温かくなった。
是非一読をお勧めする。
 
(岸)
 
 
 
〔2017 /  5  No.39〕
 
 
朝日新聞の五月一日(月)の朝刊に、
「『地毛証明書』都立高の6割」、
「学校の評判落とせない」
との見出しの記事が掲載された。
都立高校でこのような「生活指導」に
力を入れているということに、まず驚いた。
 
中高一貫の学校を作ることによって、
私立学校の特性の一つを奪い、
進学重点校を作って私立に対抗したり、
さらに今度は生活指導の重点化でも
私立学校の特性を奪うのか・・・?
と直感的に感じて、記事を読んでみた。
 
それによると、都立高校の約6割の学校で、
髪の毛を染めたり、パーマをかけたりしていないか、
入学時に一部の生徒から『地毛証明書』を
提出させている、という。
中には幼いときの写真を一緒に
提出させている学校もあるという。
 
多くの都立高校では校則で髪の染色や
パーマを禁止しているが、
染めているのに地毛だと言い張る生徒も多いので、
その対策として元から茶色い生徒や
天然パーマの生徒の保護者に予め
「証明書」を提出させている、という。
 
この背景には、都立高校は私立に比べて
生活指導が甘いという評価が定着していて、
入試倍率の低下につながっている、ということがあるそうだ。
たしかに、桐朋でも十数年前の頃、
ルーズソックスや茶髪、ピアスなどが席巻した時期があった。
 
クラスや学年単位で話をしたり、
個々に生徒を呼び出して膝詰めで話をしたりした記憶もある。
けれどもそれらの指導はほとんど効果をみず、
流行の勢いには逆らえなかった。
そして流行の終わりとともに収束していった。
 
今でもスカート丈を短くする生徒は学年が
上がるとともに増える状況で、
その指導には無力感がある。
さらにまた「くるぶしソックス」なる
新たな流行がひたひたと広がりつつある。
 
生徒指導は、ある面で常に「いたちごっこ」である。
『服装規定』の中に書かれた「清楚な美しさ」とは何かを、
言い続け、訴え続け、
・・・ようやく伝わったかな、どうかなと
思うころには卒業式を迎える。
 
(杉本)

二八のつぶやき〈第36・37回〉

2017年03月03日


東門のカンヒザクラの木が、
少しずつ花を咲かせ始めました。

濃いめのピンクといいましょうか、
紅梅の色といいましょうか、
表現力不足で申し訳ないのですが、
ぽってりとした愛らしい花が
木、いっぱいに咲き始めている様子に、
春の訪れを感じます。

そういえば、今日は三月三日、雛祭り!
(春ですねー。)

こちら「研究所だより」の更新は、
毎度のことながら滞っておりますが、
(恐縮でございます…)
Facebookの方は割とがんばっておりますので、
お時間ある時にでもご覧いただけたら
とてもうれしいです!
どうぞよろしくお願いいたします。

今回の『二八のつぶやき』の原稿を読んでいて、
どんな分野に関しても、先生方の探究心は
すごいな、と思いました。

「自分で問題をもって、
 自分で勉強していなくてはだめですよ」

……とは、桐朋学園の礎を築かれた、
生江義男先生の印象深いお言葉ですが、
先生方の胸に、今もずっと息づいているのだと、実感。

どんなことも自ら興味を持ち、
自分で知識を得、楽しんでいく。
 
その姿勢には学ぶことがたくさんです。

それでは、今年度最後の、
『二八のつぶやき』をどうぞお楽しみください。
 


〔2017 /  1  No.36〕


 
今、料理にはまっている。
我が家の諸々の事情(と言っても、
一番の理由は家族の中で私が最も帰宅が早いというだけだが)で、
週に4~5回夕飯を担当している。
 
もともと料理には興味があり、桐朋に就職してからの
長い独身時代にも結構まめに自炊をしていたことがある。
 
料理に興味を持ったきっかけは小学校6年生の時。
家庭科の授業で作ったほうれんそうのバターソテーと
みそ汁を自宅で作り、家族にふるまったところ、
両親も妹も「美味しい、美味しい」と喜んでくれた。
 
褒められると伸びる、というよりは調子に乗る私は、
俄然料理に興味を持ち、以来頻繁に母親の買い物に付き合い、
料理の手伝いと称してちょっかいを出していた。
 
今にして思えば、母親にとっては
「邪魔くさい」存在だったろうなと思う。
中高時代は部活が忙しく、そんな余裕もなくなったが、
大学時代は大学と自宅が近かったため、
昼は自宅に戻って取ることも多かった。
 
そんな時、今も続いている日本テレビの
「三分クッキング」を見ながら
「今日は俺が作るから食材だけ買っておいて」
と母親に頼み、夕飯を作ることもたびたびあった。
 
そんな体験が長い独身生活には大いに役立った。
今、我が家の諸々の事情で(しつこいですね)
頻繁に夕飯をつくるにあたって
一番心掛けていることは、いかに短い時間で
美味しい料理を作るかということ。
 
「男子ごはん」「きょうの料理」「損する人、得する人」
などの料理関連番組を録画し、
「栗原はるみのすてきレシピ」など様々な料理本を
買い込み日々研究を重ねている。
 
例えば、時短ということで言うと、タマネギのみじん切り炒め。
本来なら時間をかけてじっくり炒めたいところだが、
30分もフライパンに張り付いているわけにはいかない。
また、うっかり他の事に気を取られていると焦がしてしまう。
 
そこで、タマネギはみじん切りにしたら、
耐熱容器に入れ、バターをのせてラップをかけて
電子レンジで3分加熱。
これでOK,というか妥協。
 
息子の「これ、超うめえ!」、
妻の「あなた、これならお店開けるわよ!」
といった褒め言葉(おだて?)に乗せられ、
調子に乗った私は今日も朝から夕飯の献立を考えている。

 
(岸)
 
 
 

〔2017 /  2  No.37〕


 
私が地学を教えられるのも残り一年。
その地学教育が今、瀬戸際に立たされている。
桐朋はまだいい。
私の後任(小関先生)を採用してもらえたから。
 
大学で地学を入試科目にするところが
国立大学ぐらいしかないこともあり、
地学を専門とする教員を置いている高校は極めて少なく、
都立高校では五校に一人ぐらいで、
新規採用枠もなしというのが実状。
 
現在の学習指導要領で「地学基礎」が選択必修科目になったとはいえ、
地学分野を全く学ばずに高校を卒業していく生徒が圧倒的に多い。
 
宇宙、気象、地震、火山、環境、防災など、
科学ニュースの多くに地学が深く関わっている。
 
天変地異に対応して生き抜く力や大きな視点で
物事を観る力を養うためにも、
高校生全員が知ってほしい学問なのに。
 
私はこの四十二年間
「地学ほどおもしろい学問はない!」
という思いを伝えたくて授業に臨んできた。
 
中三での剣崎実習や高校での「星を見る会」も
本物に触れてもらいたくて継続してきた。
その思いが伝わったのか、これまで十名ほどが
大学で地学方面の学科に進んでくれた。
うち一人は現在、大学の教授(地質学)を務めており、
また別の一人はアメリカのアリゾナ大学で天文学科に進んだ。
 
昨年四月、高三紫のある生徒がやってきて
「国立を受けたいので、基礎科目ではなく
センター試験で物理と地学が必要なんです。
さらに二次試験も地学で受けたいんです。
桐朋では「地学」が設置されていないので、困っています。
特別に教えてもらえませんか?」
と懇願してきた。
 
「センター地学の全国平均点はこの二年、
41点、39点と極めて低いし、
ましてや二次試験となると無謀だよ。」
と答えると、
「それでも頑張ります」
ということで毎週二時間の特訓が始まった。
 
夏休みまではひたすら本物体験と講義、
九月以降は過去問にトライという方式で行なった。
 
地学は正解が見えにくい部分もあるので単なる暗記では通用せず
深く理解していないとまちがえやすい。
最初はまちがいが多かったこの生徒も、持ち前の知的好奇心旺盛さで、
一回も休まず粘り強く取り組んでくれた。
 
そして一月十五日の本番を迎えた。
翌朝弾んだ声で電話が。
「先生、地学満点でした!」
「それはすごい。地学で満点はほとんど聞いたことがないよ。
二次もこの調子でね。」
 
今までの中ではやりやすかった問題(全国平均53点)とはいえ、
よく頑張ったと思う。
二次試験も食らいついて、無事合格を果たしてほしい。
 
と同時に〝たかが地学、されど地学〟の存続を願いたい。 
 
(真野)

桐朋教育研究所のFacebook 始めました!

2017年02月08日


こんにちは。桐朋教育研究所です。

2017年始まりまして、最初の更新という事実に、
我ながら驚いている今日この頃です……。

ですが、何の理由もなく、
「研究所だより」を放置していたわけではございません!

ちょっぴり予告はしておりましたが、
実は、1月末より、教育研究所は、
Facebookを始めました!

今後は、Facebookにて、こまめに情報を
発信していきたいと思っておりますので、
どうぞよろしくお願いいたします。

アドレスは、下記のようになっております。↓
(「今日の真野先生」も、ご登場です!)

https://www.facebook.com/tohokyoiku/

これからも、桐朋教育研究所を、
どうぞよろしくお願い申し上げます!