在学生の声
音楽専攻で学んで
私が本学音楽専攻へ入学したのは、平成19年4月のことでした。入学した当時の私は、ただ人より声が大きいだけの正に驕慢の塊でした。自分は誰より勝っていて誰より劣っているか、周囲の学生は全員ライバルで、成績がトップでなければ歌う価値さえないと。そんな私が音楽専攻2年生の年、二度の大きな挫折にぶつかりました。定期演奏会、そして卒業演奏会への落選。悔しさに泣き暮れていた私は、歌を辞めようとさえ思っていました。そんなとき、恩師である松井康司先生が一本の電話をくださったのです。
「あなたが演奏会に選ばれなかったことは、あなたにとって、とても良かったと思います。あなたはまだ、歌の本当の意味を知らない。だから、歌を続けなさい。」
私は、何も分かっていなかった。極めてくだらない表層にばかり囚われ、真に自分の声や演奏に向き合うことなど、露もしていなかったのです。何故、私は歌うのか。成績トップになるため?誰かに褒めてもらうため?・・・・・違う、ただ一心に「歌が好き」だから。それは、幼い頃からずっと変わらず持ち続けてきた気持ちです。一番大切なことを忘れていたのです。専攻科への進学を決意した瞬間でした。
それから今に至るまで、定期演奏会をはじめ、数多くの演奏の機会に恵まれましたが、どれほど曲をこなしても、次から次へと新たな課題が立ちはだかり、どれほど本番を迎えても、舞台に立つ度に自分の未熟さを痛感するのです。かつてマリア・カラスがNel canto, tutti, studenti fino alla morte.(歌に関していえば、私達はみんな死ぬまで、学生なのよ)と言ったように、この道に於いては完成も終着点もないのでしょう。私もまた一生をかけて、歌い続け、学び続ける学生なのです。


