在学生の声
気づき、感じること
急ぎ足で学校の門を出ると、ふとツツジの花の香りがした。久しぶりに感じたその香りは、授業や稽古で忙しい毎日を送る私を、どこか落ちつかせてくれた。
桐朋学園芸術短期大学で演劇を学びはじめて四年。様々な先生方の授業を受け、あることに気付いた。「演劇には演技やダンス、歌の技術だけが必要なのではない」ということだ。人間の本質的に備わっている「物事を感じ、考える」ということが必要なのではないだろうか。「感じる」ための糸口は遠い外国の出来事や歴史といった難しいイメージのものから、日常の大学生活や街を歩くことからもできる。ただ、私たちは忙しい毎日を送っているとそんな身近なことですら気付かず、感じとれなくなっているのだ。
例えば、電車の中吊り広告を見れば、日本の経済について評論家が語っている。テレビに映る地震被害の映像も。本を読めばアフリカの難民問題が取り上げられている。旅行雑誌に美しく映るドイツも過去には凄惨な独裁者が存在したという事実。より自分に身近なことでは、落ち込んでいるときに好きな音楽を聴いてみること、自分より格好よく踊れる人を見て悔しいと感じること。人に言われて悲しいと感じたとき、友達に言ったあとで「傷つけてしまった」と感じること。……これらは、ふと身近な花の香りに気付き感じることと同じなのだ。
毎日何かひとつ、あたりまえに見かけていて考えもしなかったこと、忘れてしまったことに気付き、感じるだけでもいい。それが積み重なれば、私たちは台本の中で起こる出来事や、人物の言葉を、より豊かに受けとめ、感じとり、他の人にはできない自分だけの役の人物を演じられるのではないだろうか。
雨のにおいでもいい。風のあたたかさでもいい。太陽のまぶしさでもいい。身近なところからもう一度、気づき、感じてみよう。


