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2012年度 第9号 宮崎真子


2013.02.5 Tue

演劇専攻 宮崎真子准教授


宝石とジャングル

 私は、ひとりひとりの学生の中に、<宝石>があると信じている。全員がその内面に、その学生だけの宝石を持っているのだ。そして私は、演じている学生を見守り、科白を聞きながら、レントゲン技師がレントゲンをとるように、その学生の持っている宝石がダイヤモンドなのか、エメラルドなのか、大きさは、どこにあるのか、を探り当てる。多くの学生は、生まれてから今日までの生活の中で<殻>を被っていて、大切な宝石を見えなくしている。赤ん坊の産声は大きい。幼児の声は響き渡る。しかし、「静かにしなさい」と言われ続けているうちに、子供はいつのまにか持って産まれた声を隠し、画一的な静かな言葉しか発することができなくなる。学校の授業では、いすに座って動いてはならないと教わり、いつのまにか、原っぱをかけまわっていた頃の幼児のエネルギーを抑圧することを覚える。学生はたくさんの「××してはいけない」に縛られて育ってきている。その心の芯にある宝石を、殻をひとつひとつはぎとり、光らせるのが私の仕事だ。
 また、べつの例えをすると、学生たちと公演を作るときは、「ジャングルを育てる」ことになる。あくまでも芝居はライブである。だから、この役は大河、この役は怪鳥、ライオン、苔、椰子の木、うさぎ、などというふうに、<生態系>を作り上げると考える。それぞれの学生にはその持ち味があり、ひっそりと日陰にある羊歯のように生きるのが似合う学生もいれば、ハイエナのように獲物を食い散らす役柄の学生もいる。そして、大河も草原も風も生物もジャングルにはなくてはならないものだ。それぞれが生態系の中で活き活きと動き始めるとき、私の演出したい作品が立ち上がってくる。そうなれば、もはや演出家などいらないほどに、キャラクターが弱肉強食の世界の中でひたむきに生きるジャングルができあがる。
 宝石とジャングル、この相反するものが化学反応を起こすとき、私が育てたい俳優が現れてくるのである。

宮崎先生演出作品イベントレポートはこちらから



『パンドラの鐘』

作:野田秀樹  潤色/演出:宮崎真子

2012年度演出作品