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専攻科演劇専攻試演会『おつかれ山さん』


専攻科試演会「おつかれ山さん」 作・演出 鈴江俊郎教授

6月28日(土)・6月29日(日) 専攻科演劇専攻試演会「おつかれ山さん」を上演しました。


 6月28日(土)・6月29日(日)に専攻科演劇専攻試演会『これは白い山でなく』を上演しました(キャスト・スタッフ等の詳細はこちらから)。脚本・演出の鈴江俊郎教授の指導のもと、専攻科の学生が役者で、そして舞台に出演しないときは演技空間の奥のエリアに設定された合唱隊のメンバーとして大奮闘してくれました。高校の職員室。高校教師の山口先生はクラス担任、柔道部と演劇部のかけもち顧問、忙しくて目がまわりそう。そして山口先生が趣味で率いている劇団。そのメンバーの心も離れていきがち、活動も続けられなくなるかもしれない。そして家庭。
妻との会話も不足ぎみ。家に帰っても思い出されてしまうモンスターペアレントとの一件。胃袋もちぢんじゃう。どこに心の安らぎがあるんだろう?そんな山口先生を軸とした平凡な現代人の苦悩ぶりを見事に集団造形で立体化してくれました。

山口先生は現代日本に生きる平凡な高校教師です。教育現場には年々様々な問題がのしかかり、労働条件と環境は苦しくなる一途だと言えます。少子化による生徒数の減少、それに伴って教員数は減らされます。今までひとつでよかった部活動顧問の仕事が、二つ三つかけ持ちしなくてはいけないことも珍しくありません。校務分掌も一つだけではない場合が少なくない。無駄に近いような研修が年々増加する。教師たちは生徒たちとの会話や、悩み事にのってやる時間を削って、連日連夜残業してレポートを書かされています。自分の子供の非行や不具合をすべて教員の責任にするモンスターペアレント。苦情を申し立ててひくことのない彼らへの対応は重いストレスとなって教員の心に打撃を与えます。他の職業に比べてメンタルヘルス上の問題を抱える人の率が高いのが教育現場です。それは様々な統計や調査から明らかになっています。年々精神的問題による退職者が増えている教員たち。そういう現場に生きる教員自らが書いた台本がもとになって生まれたのがこの作品です。もとになった台本のせりふを大幅に増やし、内容をにぎやかにし、アクションを豊かにして完成させた2002年初演の脚本。それを2014年の現在に再演するために、鈴江教授は再度現場の教員に取材しました。学生たちも職員室見学を行うなどして役作りを現在の状況から学ぼうと汗しました。その結果完成したのが「2014年版 おつかれ山さん」だと言っていいでしょう。

初演当時よりも教員の職場の労働組合は弱体化しています。国家主義的な管理の圧力は東京・大阪・名古屋、主要都市では特に強くなっています。格差も広がり内向化する生徒たちの問題に寄り添おうとする良心的な現場の教員たちは、ますます孤立化しています。現場の声は競争主義、成果主義への圧力の中、かき消されていくようです。そうした山積する問題、深刻化するばかりの問題を、役者たちはよくコミカルに演じ切りました。忙しすぎる山口先生にかまってもらえないやせっぽちの柔道部員に気弱な演劇部員。若いみそらで教務副主任など引き受けてしまって激務に苦しみ強迫神経症ぎみになってしまった若い女性教員。教頭先生もいろんな人たちとの板挟みで右往左往。モンスターペアレントが職員室に乗り込んでくる面接の場面などは、緊張のあまり職員室の全員が呼吸が止まってしまったかのようです。

舞台装置につかう平台を裏向けにして立てて並べた素材感むきだしのパネル。床にあるべき平台が頭上に浮かんでいる舞台美術。小道具の机も椅子も、そのあたりに落ちてる材木を組み立てただけのような極端に素朴なできばえです。机の上のパソコンもよく見たら段ボール細工。電話の線は赤い毛糸のひもではないですか。フェイクな書類の数々は段ボールに背表紙のコピーが貼ってあるだけです。小道具の細部まで徹底して現実の危うさを表現しようとしたこれらの造形もすべて学生たちがプロスタッフの指示のもと自らつくりました。この試演会の準備は現代アート作品をクリエイトする現場でもありました。

場面転換、そしてラストシーンにうたいあげる合唱も役者のたいせつな仕事です。三部合唱、四部合唱は高校という空間の気配を感じさせる効果音としては十二分の迫力を現出していました。場面転換のために机を運びながら、衣装を着換えながら舞台上で歌うぎりぎりの忙しさが、ストーリーの切迫感を立体化するようで、客席にはボディブローのように情緒を重く届けることになりました。

演劇は総合芸術です。文学、美術、音楽、肉体の躍動。今回はそのすべてを役者が明確に背負いきった上演であったと言えるでしょう。集団的自衛権を容認する憲法解釈が閣議決定されました。この歴史的に重い転換点に立った今、たった一回しかない人生を生きる私たち。どう生きるのか、どう考え、どう動くのか、私たちは問われています。世の中がどんなに不条理な矛盾に覆いつくされても、いのちは輝きます。いとおしく、そしてこっけいな人間模様を描くこの作品が、この現在の状況に投げかけるものは決して軽くないのです。

終演後には、作・演出の鈴江俊郎教授と、専攻科メンバーから4人のキャストが選ばれ、オープンキャンパスにいらしたお客様の前でアフタートークを実施しました。稽古の様子、大変だったシーン、ジャンピングスクワットの刑など、面白い話が飛び出しました。

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